翻訳と日々

著作権切れの作品を翻訳したりしています。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

クリスマスの手紙 / イワン・イリイン

それは数年前のことだった。みながクリスマスを祝うために集い、ツリーやプレゼントを用意していた。だが私はただひとり異国の地にいて、家族もいなければ、友人もおらず、すべての人から見捨てられ、忘れ去られた気分だった。あたりは空疎で愛もなく、遠く…

現代のマルガリータ / アントン・チェーホフ

お前がマルガリータなら……お前の花婿のファウストはどこだ? あのねえ、あなた……わたしのパパは探偵で泥棒や詐欺師はたくさん見つけたけど、わたしに花婿を一人も見つけることができなかったの。だから決まってるでしょ、今は泥棒のほうが花婿よりもうんとた…

貧乏中の貧乏 / アントン・チェーホフ 

「出かけたいが、出かけるための服がない!」 初出:1884年2月25日 出典:ФЭБ: Чехов. Самая бедная бедность. — 1975 (текст) ひとことこれもおそらく本邦初訳。『月の天文学者』とおなじく、Подписи к рисункам(絵の説明文)に収録。現代日本にも通じる鉄板…

月面にて(レントーフスキーの夢幻劇『月への旅路』に入らなかった一場) / チェーホフ

月の天文学者1:見てごらんなさい、同僚くん、地上がなんと明々としている事か、あそこはグロドノの町があるところだ!あれは、ぜったい、大火事です。きっと、町全体が燃えているのだ。 月の天文学者2:あなた、何を言っているのです!ただどこかで娯楽がて…