翻訳と日々

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掃除番のマロースじいさん / ダニイル・ハルムス

シューバ*1に、帽子、ちゃんちゃんこを着て
掃除番がパイプをふかす。
そして、ベンチに腰掛けて
掃除番が雪に話す。

「おまえは飛んでる、それとも溶けてる?
何ひとつだってわかっちゃいない!
はき掃除して、かき掃除して、
ただわけもなく吹雪いてる!
一体誰に話してるんだ?
座ってパイプをふかすのさ」

掃除番はパイプを吸い、吸い……
目は雪のせいで細まって、
ため息ついて、あくびして
思いがけずに眠りこむ。

「ごらんよ、マーニャ!」と叫んだワーニャ
「見えるか、乞食がおすわりをして
真っ黒お目めで
自分の箒を見つめているぞ

まるで雪ばあさんみたい
それともただのマロースじいさん*2
そうだ、帽子をぶん殴れ
鼻っ柱をひっつかめ!」

そいつは突然唸りだし
突然足を踏み鳴らし
ベンチから立つと
ロシア語で叫んだ
「マロースが目に物見せてやるぞーー
おいらの鼻をつかもんなら!」

 

初出:1940年

出典:Даниил Хармс. Дворник Дед Мороз. // Проза и сценки. Пьесы. Стихотворения. М. 2010.

 

www.culture.ru

*1:毛皮のコート

*2:ジェド・マロース。ジェドは「おじいさん」、マロースは「寒波」の意。ロシアにおけるサンタクロース的存在で、クリスマス・シーズンにプレゼントを届けてくれる。