(大粒の雨が緑の森で) / イワン・ブーニン
大粒の雨が緑の森で
ざわめいていた、伸びたカエデ、
森に咲く花たちの中を……
聞こえるかい?よく通る歌が流れる、
気楽な声が森中に響く。
大粒の雨が緑の森で
ざわめいていた、伸びたカエデのあわいで。
空の底もはっきりと見通せる。
誰の心にも浮かんでくる、——
そして悩ませ、誘惑する、
君の姿が、春よ!
嗚呼、希望は金色!
木立は暗く、色は濃く
あなたがたを欺いた……
声はやわらかく、呼ぶようだ!
君は響かす、妙なる歌を——
そして遠くに消え去りぬ。
初出:1903年?
出典:
・ひとこと
ノーベル文学賞を受賞した最初のロシア人作家・詩人のイワン・ブーニンの詩です。
もう春も終わり、夏を迎えた感はありますが、春へのたむけにこの詩と、次のフェートの詩を訳しました。