春の雨 / А. А. フェート
まだ明々と窓の外を、
雲の切れ間に陽が輝く、
そしてスズメらはその羽で、
砂浴びをして、震えている。
いっぽう空から地上まで、
揺らめき、動くとばりがあって、
まるで金の砂の中のように
その奥に佇む森のはずれ
水滴がふたつガラスにぶつかり、
菩提樹からは蜜かぐわしく、
そして何かが庭に訪れ、
若葉たちを打ち鳴らす。
初出:1857年?
出典:
・ひとこと
フェートは日本では読まれることの少ない詩人の一人だろう(そもそも、多く読まれるロシアの詩人などいない気もするが)。手元にあるロシア文学史には唯美派の詩人と紹介され、政治などといった社会的喧騒から距離を置き、自然の美など歌った詩を多く書いたそうだ。この詩もその説明に合致するものだろう。
今年は自粛もあり、春を十分に感じることなく過ごしてしまったから、せめて詩を通して少しは春を感じたく、訳しみた。ブーニンの詩もこれも雨なのは、ただ訳者が雨が好きだから。