(湿原と沼地) / セルゲイ・エセーニン
湿原と沼地
空の青いショール。
針葉樹の金飾りを
わっと鳴らしはじめる森
ちいちいと鳴くシジュウカラ
森の巻き毛のあいだにいて、
色濃いモミの木の夢のなか
かしましく草を刈る人たち。
草原の中をぎいぎい鳴らし
延びて続く荷馬車の列——
乾いた菩提樹の匂いが
香ってくるは車輪から。
柳の木々が聞いている
風が鳴らす口笛を……
お前は忘れ去られた地、
お前は私の生まれ故郷。
1914年
出展:
ひとこと
何度か訳しているエセーニン。かつてバイト先にいたロシア人に、授業でプーシキンの詩を習った話をしたら、エセーニンの詩がよいとオススメされました。彼の詩は牧歌詩が多く、田舎育ちの人間には心地よさがあります。この詩は最後にほんのり切なさを感じますね。今年は故郷へは帰られそうにはないか。